4月に読んだ本
『主婦と恋愛』 藤野千代著 小学館
なんだか見も蓋もない題名ですがれっきとした小説。
夫と二人暮らしの主婦がふとしたきっかけで知り合った男性に対する心の揺れ動くさまを静かに綴った話。
特に不満のない日常生活の中、自分が誰かに心動かされるなんて想像もしていなかった主人公が思いがけない心の動きに戸惑いながら受け入れていく様が描かれています。
恋ってこんな風に思いがけずいつに間にかやってきて心をざわざわと波立たせるものなんだな、気がついたときには恋に落ちているんだな、と思いました。
どろどろした感じは全くありません。
読む人によっては物足りなかったり単調に感じるかもしれません。
実際に、誰にも言わないけれど心の中にこんな気持ちを秘めている人も案外多いのかも、と思いました。
広い意味で捉えればたまに行く美容師さんにドキドキしたり、訪問先の会社の受付のお姉さんに会えるとワクワクしたりする気持ちも恋愛に入るのかと。
それが実際恋愛関係になって肉体関係が発生して配偶者にばれて…となると恐いけど、ささやかなドキドキを心の中で温めているのはなんだかいいような気がします。(4月5日)
『葡萄物語』 林真理子著 角川書店
これまた主婦の恋の話。
ただ『主婦と恋愛』の主人公とは環境が全く違っていて田舎の人間関係の煩わしさや姑のとのやり取りなどもっと現実感があります。
面白くって1日で読んでしまいました。
特に会話の中に自分にも共通する思いが描かれていて“どきっ”とするものが結構ありました。
田舎の生活の煩わしさ、周りの目を意識しての暮らし方など実際に自分が実家で暮らしているときなどに感じたし、それぞれの年齢になって抱く感情など現実にどこにでもある話だと思います。
田舎を離れた同級生が帰省して遊びに来たときに感じる感情や(今の私は遊びに行く側だけど)親しい友人にも話していないことがいつの間にか周りの人たちに知れ渡っている恐ろしさなど実際よくある話…う~ん、恐い。
年を取ったら『世の中なんてそういうもんよ』と受け入れられるもんなんだろうか?それとも諦め?
ま、それはともかく、主人公が自分の中に芽生えた恋に向き合いつつ、最終的には自分の幸せについて考え行動していくさまが描かれています。
終盤で主人公が言う『どうやったり自分が幸せになれるのかちゃんと考えんと。』という言葉がきらりと光ります。
テーマは恋愛ではなくてこっちの方だったんでしょうね。
終わり方にがっかりする人もいるかもしれないけれど幸せって人それぞれだから本人が納得できる生き方が出来ればそれが一番なのではないかという気がします。
私にとっての幸せな生き方ってどんな生き方なんだろう?
でも今でも十分幸せな気がします(4月6日)
『あの日にドライブ』 荻原浩著 光文社
銀行を辞めた後一時しのぎの仕事としてタクシーの運転手になった43歳の男性が主人公。
銀行では営業成績も良く家庭を二の次にして仕事一筋だっただけに、銀行を辞めてからの今の仕事や生活、家族にまで不満だらけ。
そもそも辞めたのも本意じゃないから仕方ない気もするけど。
思わず昔の恋人の姿を求めて彼女の実家のそばに行ってみたり、学生時代に住んでいたアパートを訪ねてみたり。
読みながら『こんな風に“あの頃はよかった”とかって思って今の生活をないがしろにしてればうまく回るものを回らなくなるのに』と少しじりじりしてしまいました。
最終的には色々なきっかけから考えが少し変わり、仕事に対する姿勢や家族との関係に変化の兆しが見えてきたところで話は終わり、読後感はすっきり。
今までの自分の生き方全てを否定されたような状況から立ち直っていく姿勢にきっと世の中こんな風に頑張っている人たちがたくさんいるんだろうな、と思いました。(4月20日)





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